概要

技術的特徴として、発電量が日照に依存し不随意に変化する一方、昼間の電力需要ピークを緩和し温室効果ガス排出量を削減できる。設備は太陽電池、必要な電圧や周波数に変換するインバータ(パワーコンディショナー)、用途により蓄電池も組み合わせて構成される。開発当初は極めて高価で宇宙開発等限られた用途に用いたが、近年発電コストの低減が進み、多くの発電方法と比較して高コストながら年間数十ギガワット単位で導入されるようになった。今後コスト低減や市場拡大が続くと見込まれ、各国で普及政策が進められると同時に、貿易摩擦に発展する例や価格競争で倒産する企業が見られる。

設置場所

制約が少なく腕時計から人工衛星まで様々な場所で用いられる。地上に直接設置でき、太陽光を十分に受けられパネル重量に耐えられる場所であれば屋根や壁など様々な場所に設置可能である。軽量柔軟なフレキシブル太陽電池では、重量や接地面形状の制約も減少する。剛性があるパネルであっても通常の半分程度まで軽量化し、耐荷重の制約を減らした製品も開発されている

発電コスト

太陽光発電のコストは、一般的に設備の価格でほぼ決まる。運転に燃料費は不要であり、保守管理費用も比較的小さい。エネルギーセキュリティ向上などの付加的なコスト上のメリットも有する。特に昼間の需要ピークカットのコスト的メリットが大きいとされる。途上国で送電網が未整備な場合、消費電力に比して燃料輸送費や保守費が高い場所など(山地、離島、砂漠、宇宙等)では、現段階でも他方式に比較して最も安価な電源として利用されている。

設備導入費用の内訳は太陽電池モジュール(パネル)以外の工事・流通・周辺機器の割合が大きく、2011年時点のパネル製造費割合が2割程度とされる。
発電設備自体のコスト以外では火力発電や原子力発電の発電量の削減を進めるに伴い、需要と供給の各種変動ギャップを埋める費用発生も見込まれる。風力発電等の電源も関連する。スマートグリッド等の総合的な対策が各国で検討推進されている。

開発当初は高価で用途も人工衛星等に限られたが経験曲線効果に従い価格が低下した。現時点でもコストが比較的高く普及促進に助成が必要であるが、条件の良い地域では既にグリッドパリティが達成されたと報告されている。中長期的にはコストが最も安い発電手段の一つになると予測されている。

グリッドパリティ達成はモジュール価格で1ドル/Wp以下が目安とされた。2012年時点でパネルの種類によっては0.5 - 0.9ユーロ/Wp前後になっている。更なるコスト低減を表明する企業もある。

フランス・ドイツ・イギリス等で2020年までに順次既存の火力発電とコストで競い始めると予測されている。また米国の好条件地域では、2012 - 2014年頃に天然ガス等の発電コストよりも安くなり始めると予測されている。

日本では補助金が中断した2005年頃から一時的に価格が上昇したが、2008 - 2009年にかけて普及促進政策が施行されてからは低減を再開した。

蓄電池を用いる独立型システムについても、今後の価格低下と途上国での普及拡大が予測されている

系統連系

電力会社の送電網に繋げる形態が系統連系である。送電網が来ている場合は売電できるため系統連系で利用する場合が多い。

太陽電池モジュール→パワーコンディショナー→商用電源という接続形態を取る。

余剰売電では発電量が設置場所での利用量を上回る分を電力会社が買う(売電)。

売電電力を送電網に送ることを逆潮流と呼ぶ。夜間や悪天候時に発電量を利用量が上回ると系統側から電力供給する。

一般に独立型より発電規模が大きい。独立蓄電型のような大容量の蓄電設備が不要であり、その分、発電量あたりのコスト・GEG排出量・ライフサイクル中の投入エネルギーが独立型より小さい。

経年劣化と寿命

大部分の製品が稼働できると推測される「期待寿命」とメーカーが性能を保証する「保証期間」がある。メーカーの製造ミスで早期出力低下などトラブルが起こることもある。通常の経年劣化による出力低下は20年で1割未満とされる。

ソーラーパネルは税制面において法定耐用年数が17年と定められている。

屋外用大型モジュールの期待寿命は、過去の製品の結果から一般に20-30年以上とされる。期待寿命は明確に定められておらず、統一基準も無い。

モジュールは年月と共に徐々に性能低下する。世界各国の2000例近い各種太陽電池モジュールの経年劣化調査データのまとめでは、性能低下速度の中央値は0.5%/年、平均値は0.8%/年と報告されている。

経年劣化を調査する実証実験においてパネルの種類による経年劣化の違いを検証した結果をもとにすると、25年間に使用により単結晶シリコンパネルで出力が82 - 85%、多結晶シリコンパネルで86.8 - 89%、CISパネルで92.7 - 93.2%、ヘテロ接合(HITハイブリッドなど)パネルで90.4%、アモルファスシリコンパネルで74.6%に低下するという結果になる。なお、屋外用モジュールの出力保証として、各メーカーが10 - 25年の出力保証を付けているが、定格出力に対して保証される経年劣化による出力は25年で80%など、それぞれ実験結果と比べて低い基準でもうけられている。

モジュールの強化ガラスとセルとの間に通常EVA等の樹脂が充填される。昔の製品は樹脂が紫外線で黄変(browningまたはdarkening)し性能が急速に劣化する場合があったが樹脂の改良やガラスにセリウムを添加する等の対策で解決された。

経年劣化で発生する代表的変化としては、セルを固定するEVAなど樹脂がはがれたり(delamination)、湿気がモジュール内部に侵入し電極の腐食を起こす例が挙げられる。製造企業の技量不足から比較的早期に性能低下し交換対象になる例もある。

アモルファスシリコンを用いたモジュールは屋外光で劣化しやすかったが現在では長寿命化され、20年以上の性能を保証する製品もある。

太陽電池の型式により使用開始時に数%程度性能が低下しその後安定する挙動を示す(初期劣化)。定格値として初期劣化後の値(安定化効率)が用いられる。

製品寿命予測のための加速試験手法として塩水噴霧や紫外線照射、高温多湿 (Damp Heat)環境試験などを用いる。検証手段として実際に屋外の環境に晒すフィールドテストが1980年代から大規模に行われ、現在20数年分のデータが蓄積された。

パワーコンディショナーなど周辺機器に寿命(10年?)があり部品交換などメンテナンスが必要である。

人工衛星の電源など宇宙空間での利用では温度差200℃程度の周期的な温度変化、打ち上げ時の振動、放射線による劣化などに対応できる必要がある。このためモジュール(パドル)の構造、セルの材料や構造など各部にわたり対策が施される。

太陽光発電モジュールは長寿命なため、取り付ける架台や施工部分にも長寿命が求められる。一般の建築物同様に数年ごとの保守点検が推奨され、メーカーや代理店によっては定期保守点検プランを用意する場合がある。点検項目のガイドラインとして日本電機工業会が定めたものがある。

資源量

太陽光のエネルギーは膨大で、地上で実際に利用可能な量だけで世界のエネルギー消費量の約50倍と見積もられる。地球に降り注ぐ太陽光の総エネルギー量173000 TWのうち僅か40 TWが光合成を経て有機物を生成する。人間活動で消費するエネルギー量はさらに少なく14 TWである。仮にゴビ砂漠に現在市販されている太陽電池を敷き詰めれば、全人類のエネルギー需要量に匹敵する発電量が得られる計算である。

生産に必要な原料は豊富で少なくとも2050年頃までの予測需要は十分満たせるとされる。シリコンを用いる太陽電池では資源量は事実上無限とされる。シリコンを用いない太陽電池はインジウムなどの資源が将来的に制約要因になる可能性があるが、技術的に使用量を減らせば2050年以降も利用可能とされる。太陽電池用シリコン原料の供給は2008年まで逼迫し価格が高止まりしたが各社の増産が追いつき2009年から価格低下が予測された。太陽電池専用シリコン原料生産技術は様々なものが実用化され、精製に必要なエネルギーやコストが大幅に削減されるとされる。

日本国内で導入可能な規模、導入効果の目安

潜在的には必要量よりも桁違いに多い設備量(7984GWp = 約8TWp分)が導入可能と見積もられるが、実際の導入量は安定電力供給の電源構成上の観点から決まると見られる。導入可能な設備量は102GWp-202GWp程度とされる。建造物へのソーラーパネル設置により期待される導入量が多く、将来の導入可能量は戸建住宅53GWp(ギガワットピーク)、集合住宅22GWp、大型産業施設53GWp、公共施設14GWp、その他60GWpとされる。

太陽光発電設備の累積導入量は2015年で30GWp(3000万KWp)近くになっており、夏の昼間の電力供給に貢献している。すなわち夏の10-16時に限ると、日本の電力総需要の7%程度は太陽光によって発電供給しており、このために最近はエアコン節電が不要になっている。しかし太陽光発電の普及拡大が速すぎてこのままでは電気料金の高騰や電力網安定を損なうおそれがあるとして、政府は2014年から普及を制限した。

さて、将来的に太陽光発電の累計導入設備量が100GWp(=1億kWp)になれば日本の年間総発電量の約10%に相当する(200GWpで約20%、8TWpで8倍)。ここまで日本で太陽光発電を導入するには、「農地転用しない限り農地にはソーラーパネルを置けない」と規定している農地法を規制緩和する必要がある。たとえばソーラー電気を農産物と定義し直すと、農地のままで転作作物としてのソーラー発電ができるようになる。

世界的に見て日本の平均年間日照量は最も日照の多い海外地域の半分程度であるが、導入量世界一のドイツより多い。国内では冬期に晴天が少なく積雪の多い日本海側で日照量(発電量)が少なく、太平洋側で多くなる。

温室効果ガス (GHG) 排出量とエネルギー収支

GHG排出量は化石燃料電源の排出量より格段に少なく、利用するとGHG排出量を削減できる。エネルギーペイバックタイムやエネルギー収支比の点でも実用水準である。

世界各国の状況

世界全体の太陽電池生産量は指数関数的に拡大し続ける。PV NEWSの集計は2010年の生産量が2009年に比べ111%増加し23.9GWp(ギガ・ワットピーク)となった(値は調査会社で異なりPhoton Internationalは27.2GWpとする)。地域シェアは中国台湾合計59%、欧州13%、日本9%、北米5%、他14%である。

世界全体の2010年の太陽光発電導入量はEPIAの集計では16.6GWpである。solarbuzz社の集計で18.2GW、額が820億米ドル(約6.5兆円)である。地域別年間導入量は欧州(13.2GWp)、日本(0.99GWp)、北米(0.98GWp)、中国(0.52GWp)、APEC(0.47GWp)、他(0.42GWp)である。 市場規模は2025年に太陽電池約9兆円、構成機器全体で約13兆円、システム構築市場が約18兆円となり、それぞれ2009年の5倍以上に達するとも予測されている。

日本の状況

日本は1970年代のオイルショックから開発と普及に力を入れ、生産量や導入量で長く世界一であり。2000年ごろまで欧州全体より日本一国太陽光発電量が多かった。

2004年頃には世界の約半分の太陽電池を生産していたが2010年の生産世界シェアは9%である。生産自体は2GWpを超えて増加しており半分以上を輸出する。輸入量は国内販売量の約16%である。国内出荷量の約8割は住宅向けで一戸建て向けが中心であるが近年は集合住宅での導入例も見られる。

2005年に新エネルギー財団(NEF)の助成が終了すると国内市場は縮小し価格が下がらなくなった。

2008年以降助成策強化で国内市場は拡大し価格が下がり始めた。

関連産業の規模は2010年度見込みが約1.3兆円とされた。2011年度に約1.5兆円に拡大するとする。約半分がセル・モジュールで半分が他産業の分である。関連雇用は4万人を超えたとする。

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